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2024年11月22日
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「蛸」
2009年12月30日
ジャンル:帰省ノベル
DL:vector
制作者:関口葉月様
攻略:作品同梱の「read me」一番下からどうぞ
補完:作者様HPにオマケ短編小説在り
紹介
ああ、そうか、また夏が来たんだった。
電車の中で目覚めて、溜息をつく。夏ごとに訪れる母の故郷は遠い。
自分以外の乗客がいない車内で何かを思い、考えかけては意識的にそれを打ち消す。
何も考えたくなかった。喧嘩したばかりの友人達のことも、これから行く土地でのことも。
考える考えないに関わらず、憂鬱な気分に変わりなど無かったのだけれども。
――夏が、来てしまったんだ。
>以上紹介文より転載
レビュー完全に感想(全文ネタバレ注意)
実に渋い作品です。
手元の辞書を開いてみると、この「渋い」という言葉には思ったよりも沢山の意味がある事が知れるのですが、それら全てを意味とって、しかしやはりこの作品は渋いのだと。私はそう思います。つまりそういう作品なのです。
あと、今作は一週プレイ時間30分程度ED総数8個の中編作品です。
今作についてはいきなり蛇足からいかせて貰います。意味判らないと思いますが、一応ネタバレ注意です。
「浮き草」エンディング、これ最高のエンディングです。
こんな隙の無いEDはそうそう在りません。勝手な言い方で申し訳ありませんが、私としては是非ともこのEDを皆さんに始めに迎えていただきたいです。上記攻略を参照してでも。
あの時間、
彼女(叔母)の話を聞いていて、憤りと共感が綯い交ぜにやってくる感じ……。
彼女だけでなく、登場人物それぞれに対して思考が空回りしてしまい感情の複雑さばかりが広がっていきました。本当にやるせない。こんなに上げた拳が下ろせない気持ちになったのは初めてです。
対して主人公の言葉にはこれ以上ない程の感情移入を捧げて見ていましたが、終わってみれば在るのは虚無感と「また、ここか」という既視感から来る悲しさのみ……。やりたいことをやって、護りたいもの(自我)を護って、結果がこれですか……。
最終的に今作から大いに感じたのは、プレイヤー私自身の精神的な幼さでした。
初めは主人公の性格に寒気を感じて「現実では関わりたくないなー」なんて考えてました。恐ろしく皮肉的です。遠くから傍観する感じで見ていた筈がだんだん周囲の空気に包み込まれていき、ラストには完全に憂鬱モード。なんでしょうこのどうしようもない現実感。ほんと、渋いっす今作は。
そしてそして、
今作にはもう一つ個別EDではないエンディングが御座います。
「かすがい」エンディング。
正直に申しますと、始めに「浮き草」ではなくこの「かすがい」を見ていたら絶対に私はこの作品を楽しめてはいません。断言できます。何故なら、私のようなガキにはこのEDは難易度高すぎだからです。
あんな場面であんな言葉、言える訳がないじゃないですか。
「浮き草」でも納得がいかない気持ちはありましたが、「かすがい」のあの一言はあまりにも綺麗過ぎて逆に納得がいかなかった筈だと思います。「はいはいグッドエンドグッドエンド、めでたしめでたし……shift+削除っと」という矮小な人間の姿が目に浮かびます。
辿ったEDの順番が、「浮き草」→佐原2つ→竜彦2つ→「かすがい」。
この順番だったからこそ、私は「かすがい」を受け入れる事ができました。人間的に少し成長したとでも言いましょうか……浮き草でガツンと殴られて、そこから佐原を知って、竜彦を知って……だからこそ此のEDに感情移入できたのだと思います。ほんとに、良いEDでした……。
↓語っても語りきれない部分があるので、プレイ中に書いていたメモを挙げます。
蛸プレイメモ末端
今作は作品として少々の遊びにくさがあります。それはよくある作風の問題とか硬派だからだとかではなく、扱っている題材・要素のアクが強いからです。だからこそ今作は面白いのですから、これは仕方ありません。
併せて、"乙女向けノベルゲーム"と冠してある事が作品の色を歪めてしまっているようにも思えました(特に竜彦)。乙女向けというより一般向け女性主人公ノベルという気がします。
単なる個々の感じようですかね……なんか愚痴みたいで、すいません。
さて、ここまで2つのEDの事しか話していませんが、もう十分です。とにかくどっぷり感情移入できるEDが2つあった事が嬉しかった、それだけです。細かい所、例えばBGMだとか演出だとかは一々挙げて言うこと無し。文章の上手さとか結果を見ればお判り頂けるものだと思います。
何よりも物語が素晴らしかったです。感謝感謝。
DL:vector
制作者:関口葉月様
攻略:作品同梱の「read me」一番下からどうぞ
補完:作者様HPにオマケ短編小説在り
紹介
ああ、そうか、また夏が来たんだった。
電車の中で目覚めて、溜息をつく。夏ごとに訪れる母の故郷は遠い。
自分以外の乗客がいない車内で何かを思い、考えかけては意識的にそれを打ち消す。
何も考えたくなかった。喧嘩したばかりの友人達のことも、これから行く土地でのことも。
考える考えないに関わらず、憂鬱な気分に変わりなど無かったのだけれども。
――夏が、来てしまったんだ。
>以上紹介文より転載
実に渋い作品です。
手元の辞書を開いてみると、この「渋い」という言葉には思ったよりも沢山の意味がある事が知れるのですが、それら全てを意味とって、しかしやはりこの作品は渋いのだと。私はそう思います。つまりそういう作品なのです。
あと、今作は一週プレイ時間30分程度ED総数8個の中編作品です。
今作についてはいきなり蛇足からいかせて貰います。意味判らないと思いますが、一応ネタバレ注意です。
「浮き草」エンディング、これ最高のエンディングです。
こんな隙の無いEDはそうそう在りません。勝手な言い方で申し訳ありませんが、私としては是非ともこのEDを皆さんに始めに迎えていただきたいです。上記攻略を参照してでも。
あの時間、
彼女(叔母)の話を聞いていて、憤りと共感が綯い交ぜにやってくる感じ……。
彼女だけでなく、登場人物それぞれに対して思考が空回りしてしまい感情の複雑さばかりが広がっていきました。本当にやるせない。こんなに上げた拳が下ろせない気持ちになったのは初めてです。
対して主人公の言葉にはこれ以上ない程の感情移入を捧げて見ていましたが、終わってみれば在るのは虚無感と「また、ここか」という既視感から来る悲しさのみ……。やりたいことをやって、護りたいもの(自我)を護って、結果がこれですか……。
最終的に今作から大いに感じたのは、プレイヤー私自身の精神的な幼さでした。
初めは主人公の性格に寒気を感じて「現実では関わりたくないなー」なんて考えてました。恐ろしく皮肉的です。遠くから傍観する感じで見ていた筈がだんだん周囲の空気に包み込まれていき、ラストには完全に憂鬱モード。なんでしょうこのどうしようもない現実感。ほんと、渋いっす今作は。
そしてそして、
今作にはもう一つ個別EDではないエンディングが御座います。
「かすがい」エンディング。
正直に申しますと、始めに「浮き草」ではなくこの「かすがい」を見ていたら絶対に私はこの作品を楽しめてはいません。断言できます。何故なら、私のようなガキにはこのEDは難易度高すぎだからです。
あんな場面であんな言葉、言える訳がないじゃないですか。
「浮き草」でも納得がいかない気持ちはありましたが、「かすがい」のあの一言はあまりにも綺麗過ぎて逆に納得がいかなかった筈だと思います。「はいはいグッドエンドグッドエンド、めでたしめでたし……shift+削除っと」という矮小な人間の姿が目に浮かびます。
辿ったEDの順番が、「浮き草」→佐原2つ→竜彦2つ→「かすがい」。
この順番だったからこそ、私は「かすがい」を受け入れる事ができました。人間的に少し成長したとでも言いましょうか……浮き草でガツンと殴られて、そこから佐原を知って、竜彦を知って……だからこそ此のEDに感情移入できたのだと思います。ほんとに、良いEDでした……。
↓語っても語りきれない部分があるので、プレイ中に書いていたメモを挙げます。
蛸プレイメモ末端
今作は作品として少々の遊びにくさがあります。それはよくある作風の問題とか硬派だからだとかではなく、扱っている題材・要素のアクが強いからです。だからこそ今作は面白いのですから、これは仕方ありません。
併せて、"乙女向けノベルゲーム"と冠してある事が作品の色を歪めてしまっているようにも思えました(特に竜彦)。乙女向けというより一般向け女性主人公ノベルという気がします。
単なる個々の感じようですかね……なんか愚痴みたいで、すいません。
さて、ここまで2つのEDの事しか話していませんが、もう十分です。とにかくどっぷり感情移入できるEDが2つあった事が嬉しかった、それだけです。細かい所、例えばBGMだとか演出だとかは一々挙げて言うこと無し。文章の上手さとか結果を見ればお判り頂けるものだと思います。
何よりも物語が素晴らしかったです。感謝感謝。
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